ASTMとISO~両規格の違いについて~
このページではASTM法とISO法の違いをご説明させていただきます。ASTM法とISO法について詳しくお知りになりたい方、ご相談がある方は電話・メールにてお問い合わせください。物性測定・評価・試験センターは、低コスト&高精度の物性測定をご評価いただき、数多くのお客様から継続的にご依頼を頂戴しております。試験そのもののコストダウンに努めるのはもちろん、試験の種類・回数にかかわらず試験片の成形費用を1グレード3,000円に設定しているのは、当社ならではです。
ASTM規格が誕生したきっかけは19世紀末のアメリカの鉄道産業にあり、当時の鉄道は蒸気機関車がメインで機関車やレールに頻繁に故障が発生して、このようなトラブルを防ぐ為に、工業製品の品質の均一化を目指して生まれたのがASTMです。
工業製品に用いられる部品の強度やサイズの基準(ASTM規格)を設け、ASTM規格に従ってものを作ることで製品の品質が安定して故障が減りました。
ISO規格とは、国際標準化機構が制定する国際規格です。アメリカでASTMが生まれたのと同様に世界各国で似たような考えがあり(日本ではJIS規格)先進国では各国で違う規格が適用されていました。しかし世界規模で商品が流通する現代では不都合が生まれてきて、そこで世界共通の工業規格として創設されたのがISO規格です。
最近、弊社での問い合わせで増えているのがASTM規格の試験です。
現在ではISO規格の試験が国内で一般的であり、ASTM規格は過去のものと思われがちですが東南アジアでは、まだまだASTM規格が主流なのです。そこで国内生産した製品を東南アジアに輸出しようとした時に相手国の会社にASTM規格を求められることが多いです。
まずは試験片の形状の違いです。ISOは試験片A形(ISO3167)通称ISO多目的試験片を使用いたします。「全長≧150」「厚み4mm」「狭い部分の幅10mm」「狭い部分の長さ80mm」「末端部分の幅20mm」「広い平行部分の長さ104~113」「r半径20~25」のダンベル状でほとんどの一般機械物性に使用できるため、一般的にISO多目的試験片と呼ばれます。
ASTM試験片は、Type-1試験片(ASTM D638)通称ASTM1号ダンベル片と呼ばれます。
ISO多目的試験片との大きな違いは、「厚み3.2mm ±0.4」「狭い部分の幅13mm ±0.5」で、用途は引張り試験と幅の広い末端部分の20mm角でビカット熱試験を行います。その他の一般機械物性試験 曲げ試験、IZOD衝撃試験、加熱変形温度はタンザク片を使用いたします。
曲げ試験と加熱変形温度は、「127mm×12.7mm×6.4mmt」タンザク片IZOD衝撃試験には、切削加工して「63.5mm×12.7mm×6.4mmtノッチ45℃2mm深さ」を使用いたします。
ISO試験片とASTM試験片の形状の違いは前項で述べましたが、試験方法の違いは一般的な試験を基に表にしてみました。
ISO測定法 | ASTM測定法 | |
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引張り試験 | ISO 527-1 ISO多目的試験片 試験速度 50mm/min 単位Mpa |
ASTM D638 ASTM1号試験片 試験速度 5mm/min 単位kg/cm2 % |
曲げ試験 | ISO 178 80×10×4mmt 試験速度 2mm/min 単位Mpa 弾性率 ひずみ応力の割線弾性率 |
ASTM D790 127×12.7×6.4mmt 試験速度 2.5mm/min 単位kg/cm2 弾性率 傾斜の大きい傾きの接線弾性率 |
衝撃強さ (ノッチ側) |
ISO 179 シャルピー衝撃試験 80×10×4mmtノッチ 単位KJ/m3 ハンマー速度 2.9m/s(0.5~5J) 水平で反ノッチ側に衝撃を与える |
ASTM D256 アイゾッド衝撃試験 63.5×12.7×6.4mmtノッチ 単位kgcm/cm2 ハンマー速度 3.46m/s 垂直でノッチ側に衝撃を与える |
HDT試験 | ISO 751-1 荷重たわみ温度 80×10×4mmt 単位℃ 試験方法 フラットワイズ |
ASTM D648 加熱変形温度 127×12.7×6.4mmt 単位℃ 試験方法 エッジワイズ |
Vicat軟化点 | ISO 306 80×10×4mmt 針状圧子直径1mmが1mm侵入した 伝熱媒体の温度測定 |
ASTM D1525 ASTM1号ダンベル片切り出し 20mm×20mm片使用 針状圧子直径1mmが 1mm侵入した伝熱媒体の温度測定 |
試験片の形状
規格 | ISO 3167:93 (JIS K 7139:96) | ASTM D638:95 | ASTM D638:95 | |
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試験片の形 | A形 | B形 | Type-I 試験片 | Type-I 試験片 |
全長 | ≧150 | 165 | 165 | |
狭い平行部分の長さ | 80±2 | 60.0±0.5 | 57±0.5 | 57±0.5 |
半径 | 20~25 | ≧60 | 76±1 | 76±1 |
広い平行部分の距離 | 104~113 | 106~120 | 115±5 | 115±5 |
末端部分の幅 | 20.0±0.2 | 19(+6.4,0) | 19(+6.4,0) | |
狭い部分の幅 | 10.0±0.2 | 13±0.5 | 13±0.5 | |
厚さ | 4.0±0.2 | 3.2±0.4 | 3.2±0.4 |
試験片の調整
規格 | ISO 527-1 (JIS K 7161:97) ISO 527-2 (JIS K 7162:97) |
ASTM D638:95 |
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成形後の保存 | 23±2℃、50±5%RHで88時間以上放置。個別に特別な規定があればそちらに従う。 | 23±2℃、50±5%RHで40時間以上放置。吸水率の大きい樹脂は、それ専用の規格に従う。 |
ISO測定法 | 従来(ASTM)測定法 | ||
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曲げ特性 | 規格番号 試験片の形状 試験速度 弾性率の求め方 |
ISO178 ISO316: 80×10×4mmt 2mm/min 0.05%と0.25%のひずみ時の応力から計算した割線弾性率 |
ASTM D790 127×12.7×6.4mmt 2.5mm/min 初期のもっとも傾斜の大きい傾きから計算された接線弾性率 |
衝撃強さ (ノッチ側) |
規格番号 試験片の形状 ハンマー速度 |
ISO179(シャルピー衝撃試験) ISO316: 80×10×4mmt 2.9m/s(0.5~5.0Jの場合) |
ASTM D256(アイゾット衝撃試験) 63.5×12.7×6.4mmt 3.46m/s |
荷重たわみ温度 | 規格番号 試験片の形状 試験方法 |
ISO75-1、75-2 ISO316: 80×10×4mmt フラットワイズ |
ASTM D648 127×12.7×6.4mmt エッジワイズ |
Vicat軟化温度 | 規格番号 試験片の形状 試験方法 荷重 |
ISO306 ISO316: 80×10×4mmt フラットワイズ 10Nを採用 |
ASTM D1525 63.5×12.7×6.4mmt エッジワイズ 10N |
MV | 規格番号 オリフィスL/D 流入角 ズリ速度 |
ISO11443 1/20 180° 1000/s |
- 1/10 90° 1216/s |
燃焼性 (水平燃焼) |
規格番号 試験片形状 調湿 装置 試験片の数 測定値 |
IEC 60695-11-10:99 125×13×3mmt 23±2℃、50±5%RHで88時間以上放置 個別に特別な規定があればそちらに従う ISO10093で規定されたバーナー 3 燃焼速度(mm/min) 13mm未満は厚みを記入 |
ASTM D635:91 125×12.5×任意mmt 個別規定が無ければそのまま ASTM D5025:94規定 10以上 平均燃焼時間(秒) 平均燃焼距離(mm) |
燃焼性 (垂直燃焼) |
規格番号 試験片形状 調湿 評価 |
IEC 60695-11-10:99 125×13×3mm (3mm以下でも可) 5個2セットは23±2℃、 50±5%RHで48h以上 5個2セットは70±1℃で168±2h 燃焼レベル(FV0、FV1、FV2) |
125×13×3mm (3mm以下でも可) 5個は23±2℃、50±5%RHで48h以上 5個は70±1℃で168以上 燃焼レベル |
耐トラッキング性 | 規格番号 試験片の形状 調湿 操作手順 |
IEC 60112:79 >15 × >15 × 4mmt 23±2℃、50±5%RHで88時間以上 まず50滴で破壊しない最高電圧を求める 次いで25V下げて、100滴で破壊しなければ、先の電圧をCTIとする5回再現が必要 |
ASTM D3638:93 50 or 100φ×≧ 2.5mmt ASTM D618 23±2℃、50±5%RHで40h 破壊電圧と滴下数をプロットし、50滴の電圧を読み取る |